食物繊維は食後の血糖値の急上昇をおさえてくれる大切な栄養素です。血糖値は食事をすると上昇しますが、血糖値が急激に上昇することは糖尿病をはじめ、さまざまな病気・不調につながりかねません。食後の血糖値の急上昇をおさえることがポイントです(食後の血糖値の上昇をおさえる食べ方はこちらの記事、食後の血糖値の急上昇をおさえる栄養素「食物繊維」はこちらの記事で紹介しました)。
食物繊維は、野菜・海藻類・果物に多く含まれますが、今回は主食となるごはんに含まれる食物繊維を紹介します。主食選びの新たな考え方にしてみてください。
血糖値について
血糖値とは、血液のブドウ糖の濃度のことです。

血糖値は食事をすると上昇し、
すい臓から出されるインスリンのおかげで下がります。
血糖値の上昇が基準値の範囲内なら良いのですが、基準値を超えて血糖値が上昇するという状態がづづくと、糖尿病につながります。糖尿病は合併症が恐ろしい病気です。
血糖値が高い状態が続くと血管が傷つき、もろくなっていきます。脳卒中や心筋梗塞を引き起こす動脈硬化になりかねません。
血糖値のコントロールは糖尿病の治療で重要ですし、健康な人でも常に血糖値の急上昇をさせない食事を心がけることが大切です。(こちらの記事も参考に)
血糖値に関わる栄養素
血糖値に影響を与える栄養素は炭水化物(ごはん・パン・麺類などに多く含まれる)です。
炭水化物は
糖質と食物繊維に分類されますが、
血糖値の上昇に関わるのは「糖質」です。
(糖質は体内でブドウ糖に変わります、こちらの記事も参考に)
反対に、「食物繊維」は、
血糖値の上昇を緩やかにしてくれる働きがあります。
ふたつは炭水化物というくくりになるのですが、血糖値に関与する働きに違いがあるのでまぎらわしいですね。
血糖値を上昇させる → 「糖質」
血糖値の上昇を緩やかにする → 「食物繊維」
ということを頭に入れていただけたら良いと思います。
ただ、糖質は悪者というイメージはもたないでほしいです。血糖値を上昇させることは悪いことではありません。からだは常に一定の血糖値が保たれていないといけません。低血糖状態は命の危険につながります。
血糖値を急上昇させることがいけないのです。糖質の食べ過ぎや偏食が血糖値の急上昇につながるのであって、糖質は適量を上手に食べることが大切です。
食物繊維摂取目標量
血糖値の上昇を緩やかにする栄養素は「食物繊維」です。
食物繊維は野菜・海藻類・きのこ類などに多く含まれています(詳しくはこちらの記事)。
食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする以外にも、
腸内環境を整える・便秘の解消・コレステロールや塩分を体外に排泄するなど、
健康維持増進に有効な作用が明らかにされてきています。
どのくらい食物繊維をとれば良いのかというと
1日の食物繊維摂取目標量は
男性20g以上
女性18g以上
です。(参考:日本人の食事摂取基準2015)
しかし、実際の食物繊維の摂取量は
14.2gと、目標量を下回っています。
(参考:平成28年度国民健康栄養調査)
食物繊維18gは、野菜だとキャベツ1玉(1kg)に相当します。
具沢山の汁物にしたり、煮てかさを減らして野菜をたっぷりとることは大切ですね。
しかし、野菜だけで1日の食物繊維目標量を達成しようと思ったら結構大変ですよね?
食物繊維は、主食となるごはんにも含まれています。
主食の食物繊維量
ごはんの食物繊維含有量を表にしました。
不溶性食物繊維(g) | 水溶性食物繊維(g) | 食物繊維総量(g) | |
精白米(150g) | 0.5 | 0 | 0.5 |
半つき米(150g) | 0.9 | 0.3 | 1.2 |
はいが精米(150g) | 0.9 | 0.3 | 1.2 |
玄米(150g) | 1.8 | 0.3 | 2.1 |
発芽玄米(150g) | 2.4 | 0.3 | 2.7 |
(参考:日本食品標準成分表2015)
主食に食物繊維が含まれるとはいえ、白米は少ないですね。玄米など精白度が低いお米に食物繊維が多く含まれることがわかります。
食物繊維含有量の差は、精白度です。
精白度合いは以下のような順で進みます。
玄米 < 半つき米 < はいが精米 < 精白米
玄米のぬか層には食物繊維が豊富に含まれています。
そのため、精白度が進むにつれて食物繊維やビタミン・ミネラルなどが失われていくのです。
玄米・・・ぬかと胚芽が残っている
半つき米・・・玄米からぬかと胚芽の50%をとうせいしたもの
はいが精米・・・胚芽の残存率を80%以上にしたもの(味は精白米に近い)
精白米・・・普段よく口にする白米。ぬかと胚芽のほとんどを取り除いたもの
発芽玄米・・・玄米をわずかに発芽させたもの(発芽のために必要な栄養を蓄えるために玄米よりも栄養価が高い)
例えば、1日3食お米を食べるとします。
食物繊維摂取量は、
3食(女性の1食のご飯の目安量150gで計算)白米だと1.5gですが、
3食とも玄米にすると6.3gと
4.8gの差があります。
現在の日本人の食物繊維摂取量は14.2gなので、
主食を玄米にかえると1日の食物繊維目標量を達成できそうですよね。
玄米のGI値について
玄米の良いところをもうひとつお伝えします。玄米はGI値が低いのです。
GI値とは、ブドウ糖を基準に100としたとき、
食品をたべた後の血糖値の上昇度合を表した数字です。
つまり、
GI値が高いと、食後の血糖値が急上昇しやすい食品
GI値が低いと食後の血糖値の上昇を低くおさえてくれる食品
ということです。
精製された白米はGI値が高く、玄米など精製度の低いものはGI値が低いのです。
未精製の食品は、消化・吸収に時間がかかり、糖質の吸収スピードがゆるやかになるため、食後に血糖値が急上昇しにくいのです。
まとめ
今回は、主食となるごはんに含まれる食物繊維量を紹介しました。白米に比べて玄米は食物繊維が豊富です。精白度があがると、食物繊維が失われていくため(ビタミンやミネラルも同様に失われます)白米は食物繊維含有量が少なくなります。食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにしてくれる大切な栄養素です。
野菜をたっぷり食べること以外にも食物繊維の摂り方として主食を選ぶことを紹介しました。十分に野菜摂取できていないなと自覚のあるかた、白米を玄米にかえるという案はいががでしょうか。
